モダン・ラブ (2017) レビュー

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“新しい物語と映像美を生み出す才能に恵まれた福島拓哉を堪能できる、ものすごい作品である。”

First of all, I want to express my thanks to Fukushima who made it possible for my review to be translated in Japanese.

イントロダクション

愛とは普遍的で永遠なものである。紫式部「源氏物語」、近松門左衛門「曽根崎心中」、夏目漱石「坊ちゃん」。これらの物語はいずれも愛についての考察だ。時代を超えて脚本家や詩人は愛を書き紡いできた。 そして映画の夜明けとともに、この探求対象は当然のように銀幕でも表現され続けている。 愛の探求は文化の誕生と同じほど長い歴史がある。すでに語り尽くされた愛の本質。しかし、それでもまだ、探求の先に新たな表現があるのではないだろうか? 福島拓哉の『モダン・ラブ』は、この問いに対する一つの答えを明示している。

レビュー

新惑星・エマノンがNASAにより発見された。 日本人教授・遠峯(大木雄高)主導による調査が続く中、多くの企業がこの発見を活用しようと世界中に影響が及んでいる。vlcsnap-2018-03-22-17h14m59s858テレビ出演した遠峯は、地球規模に発生している異常気象はエマノンが原因であると仮説を発表した。

大学で理論物理学を学ぶ大学院生・ミカ(稲村梓)は前田教授(川瀬陽太)の研究室で、同じく学生の中井(町山博彦)と高山(佐藤睦)と研究をしている。ミカは学業の傍ら旅行代理店でアルバイトをして生計を立てている。 ある日、一人の旅行客(園部貴一)がアガルタ行きの航空券を求める。しかしミカや同僚のゲイの先輩・シゲ(芳野正朝)が調べても、アガルタという場所を見つけることができなかった。

その後、ミカは元恋人のテル(高橋卓郎)の声の幻聴が聞こえること、5年間生理も止まっていることをシゲに告白する(psycho-note1参照) 木製の脳の置物をプレゼントとして受け取った後、ミカは突然デジャブの感覚に襲われ、自分と同じ姿形をした人物と出会う。

vlcsnap-2018-03-22-17h15m14s841.png『モダン・ラブ』は現代日本社会における愛を描きながらも、SFの要素を物語に取り込み、不規則で独創的な語り口でテーマを掘り下げていく。 福島は、もちろんただのSF映画として作り上げたのではない。これらの要素は愛やロマンティックな関係性を掘り下げるために用いられている。 物語はSF的な伏線の全てを回収していないが、福島は、観客の解釈を必要とした、より意識的な体験による自我と愛の探求を可能としている。 『モダン・ラブ』は、ただの感動的な物語を超えているのだ。もちろんストーリーの中で琴線に触れる場面は多く登場するが、全ては圧倒的に心を揺さぶるラストに集約されていく。

福島は賢明な演出で単調な感情描写を避け、主人公・ミカを複雑な人物像に構築している。 彼女は人生の転機(運命?)を明確に受け入れ、そして同時に確実に抵抗している複雑なキャラクターだ。 vlcsnap-2018-03-22-17h16m59s186.png物語の差し迫る展開は惑星・エマノンの出現と膨張により象徴的に表現されている。(Narra-note 1参照)

やがて日本の日常生活のシーンが終わると、交錯する様々な世界線と、複数のミカの存在へ物語の糸が解き放たれる。 (Narra-note 2参照) このSF要素により福島は、通常の主人公の主観と同時に、複数のミカの「主観たち」という斬新な手法を確立した。(Acting-note 1参照) 基本的に『モダン・ラブ』は、我々の社会的環境(他者とその他、すなわち我々が生まれ持っている象徴的構造)により我々は自我を定義すること、そして構造の相違がもたらす主観の相違を表現している。(Narra-note 3参照) 別の言い方をすれば、個人の主観的自我は、その周りにいる他者達の主観によってその存在が定義され保たれている。世界線によりミカの周囲が違うので、ミカが違うように。

vlcsnap-2018-03-22-17h18m12s906それでも、2人のミカには共通性が存在する。それは彼女達の主観的危機だ。3人目のミカにおいては、もはや状態がより悪くなるリスクしか残っていない。 愛と欲望、距離と疎外感、自分の存在が消えてしまう危険性、整理できない心。 これらの要素はミカの主観的危機の一部として用いられている。 そして惑星エマノンが急膨張した時、ミカの主観的危機がさらに問題化していく。『モダン・ラブ』は、人生を変えるためには、他者よりも大きい自身の変化、そして前進が必要だと、鋭く突きつけている。(Narra note 4参照)

『モダン・ラブ』のカメラワークは明らかに巧妙に計算されている。 固定ショットはほぼ全てミカにフォーカスが置かれていて、どのショットも何らかの動きにより特徴づけられている。 また、ハンディ撮影により振動したり、空間内をゆっくりと動いたり、流れるような動きで登場人物をフォローしたりする。vlcsnap-2018-03-22-17h18m46s622.png この美しい映像で満たされたカメラワークのブレンドは、物語を楽しみ、また没頭させることに成功している。これは福島の監督としての才能の真骨頂である。(cine-note 1 参照) 動きのあるショットは困難な編集作業を経ている。 (ループのシークエンスで)場合によっては「編集」が見え、ショットが最初は長かったことを意図的に感じさせるが、一部が削除され流れがよくなっていくように作られている。 また、映画全体の流れに介入する他の要素として、早送りされたカットや突然の効果音がある。

『モダン・ラブ』は現代において愛と喪失を新たな形で描いた偉大な作品である。 この物語にSF要素をミックスすることで、福島は愛というテーマをより強く認識、表現することを可能にしている。 彼の映画表現手法と、稲村梓と高橋卓郎の間の化学反応により、観客は物語の結末と彼のメッセージに引き込まれるはずだ。 愛を失った時しか、終わったことを経験することはできない。終焉が迫る時、新たな世界が開花し始めるのだ、と。 『モダン・ラブ』は斬新な物語と美しい映像表現で福島拓哉の才能を明らかにしている。 簡潔にいえば、福島は豊かな将来性のある監督である。

eiga

 

注釈

Cine-Note 1: 本当に素晴らしい長回しのショットがある。旅行代理店のファーストショットだ。このショットはシゲをフォローする。シゲが動くにつれてカメラは彼の周囲を旋回し、ミカや他の人と会話している間だけ一時停止する。

Acting-Note- 1: 多少不自然な瞬間はあったが、それでもミカ役の稲村梓の演技を称賛したい。稲村は非常に難しいタスクを与えられている。彼女は三人の異なるミカを演じ、自分と交流し、さらに想像上の声と会話しなければならなかったのだ。

Psycho-note 1: ミカの幻聴は精神疾患に基づく表現ではないが、ミカの主観を感じることができるよい手法だ。

Narra-note 1: 主観の変化は内的要因ではなく、外的要因によってもたらされるところに留意したい。

Narra-note 2: 注意すると興味深いのは、仕事でのフォーマルな会話とそうでない会話との切り替えや、日本で使われるゲイのオネエ言葉。もちろん、食べる行為も繰り返される現象だ。

Narra-note 3: よく見ると、世界線による多くの違いを見分けることができる。ミカ自身だけではなく、周りの環境や登場人物もズレが生じている。例えば、ある世界線ではシゲがゲイでなかったり、別の世界線ではテルが精神的な問題を持っているなど。

Narra-note 4: 記号としての存在も物語中で触れられている。例えばテルだが、誰かが忘れない限り、彼は象徴的に生きている。彼の物語の一部は、たとえ新しい物語が加えられていなくても、まだ誰かの記憶の中に生きている。

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